冬深まり、色失せる山奥。
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5年前、わたしの初めての「海外生活」は、ハワイの田舎島の田舎町で始まりました。旅行やごく短期の滞在を除けば、人生で初めての長期海外滞在。日本以外に暮らすのも初めてでしたが、日本でも東京とその近郊でしか暮らしたことのないわたしにとっては、何もないど田舎での暮らしも人生で初めてでした。

で、その田舎がいったいどれだけ田舎だったかというのは、ご興味があればこちらをご覧になっていただければと思うのですが、ともかく日々の生活物資の買い物に出るのにも不自由し、東京で、会社帰りにデパートに買い物に行ったり、夜遅くまで開いているスーパーやコンビニに寄っていったりする生活とは、あまりにも対極にありました。そのどちらがよりいいのか、という話をここでするつもりはありませんが、自分自身がそれまで経験したことがない生活だったというのは確かでした。

幸い、かろうじてインターネットは使えたのですが(そうでなければ生活自体が無理だったので)、初めてのアメリカ生活で不思議に思ったことなどを調べているうちに、やはり生来の食い意地が顔を出して、気づけば食べ物関係のサイトばかり見ていたような気がします。

電話注文やメールオーダーなどの、いわゆる通信販売はその昔から存在していましたが、商品選びから注文、支払いまですべてネットでできるオンラインショッピングが急速に普及し始めたのはこの頃だったのではないでしょうか。あちこちの食べ物屋(というか正確にはお菓子屋)サイトを見ては、これは何だろう、これはおいしそうだ、などとアメリカのお菓子に興味津々で見入り、どうしても試してみたくて注文を決心するも、アメリカ本土から離島であるハワイまでの送料の高さを見て諦める、ということを何度繰り返したかわかりません。

そんななかでも、どーーしても食べてみたかったとか、送料もなんとか納得いくものだったりとか、いくつかの条件を満たして、実際に注文してみたものもいくつかありました。そのひとつが、babkaと呼ばれるものでした。
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ばぶか?とは何ぞや?というのが最初の反応で、わたしにとって初めて聞く名前のお菓子だったのですが、babka(またはbobka)というのはどうもユダヤ圏や東欧諸国の伝統的な甘いパン菓子のようで(いろいろなバリエーションあり)、アメリカでは特にユダヤ系が多い地域ではポピュラーな食べ物のようでした。実際、わたしが取り寄せをしたのもニューヨークにあるお店でした。

で、これはいわゆるcoffee cake(コーヒーケーキ:コーヒーと一緒に食べるお菓子。コーヒーが入っているわけではない。これも最初に知ったときはショックでしたっけ…)にあたるもので、チョコレートやレーズン、シナモン、ポピーシードなどのフレーバーはありますが、まあ言ってみれば素朴な感じのパン菓子。なぜ、何が決め手でこれをわざわざ取寄せようと思ったのか、今となっては自分でも思い出せないのですが、とにかく何か試してみたかったのかもしれません。

そして、せっかく(高い送料を払って)取寄せるからには、1個だけというのはあまりにもったいない。というわけで、やれチョコ味だの、やれポピーシード入りだの、クランベリー入りだの、なんだか4~5個くらい(!)まとめて注文した気がします。シフォンケーキのような丸い筒型で焼かれたタイプでしたが、なにせアメリカのお菓子ですので、でかい。大きなダンボールが届いて、直径25cm以上はあろうかというパンが何個も出てきたときは、われながら思わず笑ってしまいましたっけ。
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かんじんの味ですが、ひとことで言いまして、えーと大味というのでしょうかね。クッキーのようにかりかりしてるわけでなし、チョコレートケーキのように濃厚な味でなし、フルーツの入ったお菓子のように味に変化があるわけでもなし、まあコーヒーケーキというのは得てしてそういうものなんですが、まあ、ぶっちゃけ、味自体にそんなに特徴があるわけではないのです。おいしかったのはおいしかったんですが、甘いしでかいし、こんなにあっても飽きるなー…とひそかに思ったものでした。 …の、わりに、なぜか割りとあっさり食べ終わったんですが(汗)。


その後、アメリカの市販のお菓子は全体的にわたしには甘すぎるという結論に達し、また、もう少し街なかに引っ越して普通に買い物ができるようになったこと、台所道具も少しずつ揃えたので、何年もしていなかった料理やお菓子作りを少しずつ始めたことなどもあって、わざわざ高い送料を払ってお菓子を取寄せることはほとんどなくなりました(たまにやってましたけど)。バブカ自体は、こういうパン菓子自体は珍しくはなかったけれど(日本にも似たようなものは売っていると思う)、それでもハワイではあまり見かけるものでもなかったので、その後再びバブカを食べることはありませんでしたが、ときどき、なにかの拍子にふと思い出したりしていました。


***


あれから5年以上の月日が経ち、その間にハワイを離れて日本に戻ってきていますが、この春に突然、バブカのことを思い出したのです。たぶんそれは、長野の山のなかで、ひっそりと建つその家が、ハワイで最初に暮らした家を思い起こさせたからかもしれません。

このブログでも今まで何度ともなく書いていたとおり、わたしはイーストを扱うのが不慣れで、パンを焼いて成功したことがほとんどありません。特に東京に戻ってからは、おいしいパンならいくらでも店で売っているので、ますます自分でパンを焼くこともなくなっていました。それでも、バブカのレシピはいくつか手元にあります。パン生地の作り方もフィリングもまちまちなのですが、昔から、いつかバブカを自分で作ることがあったらこれを使おう、と決めていたレシピがありました。

それがMoosewood Restaurant Book of Desserts (Three Rivers Press, 1997) という本に載っていたNew York Chocolate Babkaというもの。Moosewood Restaurantとは、ニューヨーク州にある自然食レストランで、わたしは行ったことはないのですが、店の料理本が何冊も出ています。この本は、ハワイに住んでいたときに図書館で借りたもので、そのときに気になったレシピをいくつか保存しておいたうちのひとつでした。

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パン生地自体は、このレシピではほとんど捏ねることをせず、材料を混ぜたら冷蔵庫に入れてひと晩寝かせるだけで、二次発酵もなし。翌日、生地を分けて薄く伸ばし、くるみやレーズン、チョコレートなどを入れたフィリングを塗って生地をロールケーキのように丸め、それを筒型の型に入れて焼くだけ。パン作りに慣れていない者にとっては非常に気軽にできるレシピです。使った型が少し小さめだったので、全体に分量を3分の2に減らして作りましたが、砂糖の量などはあえて変えていません。きょうのテーマは正統派アメリカンですから。(違)


オーブンの下火がいまいち弱かったので、最後にパンをひっくり返して(!)底を上にして焼いたため、出来上がりがまっ平らになってますが(汗)ちゃんと膨らみました。もっとも、ほかの材料に比べてかなりイーストの量が多いので、こりゃあ膨らむよなぁ、という感じ。バターの量もすごくて、まさにパンというよりケーキだと思って作ったほうがいいくらいなので、まあ、いかにも失敗しづらそうなレシピではありました。
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それはともかく、焼きたての粗熱の取れたところを切っていそいそと食べたら、甘くてふんわりといい香りで、いかにもコーヒーと合う味。ちゃんとパンの味がしてました。初めて食べたバブカの味そのものは、正直言ってあまり思い出せないのですが、コーヒーがなくて紅茶をがぶ飲みしながら朝ごはんにひと切れ、パソコンに向かってひと切れ、おやつにひと切れ…と食べていたっけ、とそんなことをなつかしく思い出しました。


思えば、ハワイから見たらニューヨークは同じアメリカ国内とはいえ日本よりも距離は遠いわけで、アメリカの東の端の都会から西の端の田舎町まではるばると飛んできたお菓子を食べたことを、今こうして、さらに離れた日本の山の中で、今度は自分で作ったお菓子を食べながら思い出した8月の終わりでした。


***



去る8月21日(日本時間で22日)に、このブログの前身となるウェブ日記を最初にハワイで書き始めてから丸5年になりました。毎年、ブログの誕生日を迎えるたびに、ああ、もう2年、もう3年、と、そのたびに月日の過ぎる速さを実感していましたが、今年はああ、ついに5年かぁ~、という感じ。よくこんなに続いたなぁ、と感心する一方で、最近は更新の頻度も落ちているし、だらだらと同じようなことばかりやっているし、ブログをやっている意味もあるのかどうなのかと思ったり(それは毎年思っているんですが)。

そこでこの8月は、ひっそりとブログ5周年を記念して、気分転換を兼ねてブログの模様替えをし、そして「その日食べたものをひとつだけでも書く」という初心に返ったつもりで、日記を始めた頃そうしていたように、「なんでもいいから毎日更新」を目標に1か月続けてみました
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その間、写真だけの日もあり、その日の食べ物とは何の関係もないものもあり、また1日の終わりに日付が変わる前に慌てて写真だけアップしておいて、それから内容更新して公開したり、、、まあ「ズル」も多少はありましたが、ひさしぶりに毎日何かブログにあげてみるというのは新鮮で楽しかったです。そして、今までこのブログ上ではあえてやらなかったこと、またはしないと決めていたこと(つまらない決め事ばかりですが)も、この際思い切って破ってみたり、個人的にブログの新しい面も発見または再発見できた期間でもありました。

ブログをご覧いただいている皆様には、何か更新されたと思って見に来たらたいしたものが載ってなかった、、なんて思われたかもしれませんが、1か月おつきあいいただき、どうもありがとうございました。当初から自分で決めていたとおり、9月になったのでひとまず(だいたい)以前どおりの形に戻し、更新のペースもまた少しのんびりになりますが、これまでどおりまた気が向いたら覗きにきていただければ嬉しいです。

最初は遠くに住む家族友人のために書き始めて、最近ではすっかり自分の自己満足のためにやっているブログですが、見に来てくれる方がひとりもいなかったら、やっぱりここまでは続かなかったと思うのです。ですから、このブログが5年間続いて、6年目を迎えることができたのは、ブログを見に来てくださる皆様のおかげです。どうもありがとうございます。こんなマイペースなブログですが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
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by zo.chika | 2008-09-01 23:54 | 一日一膳